野口 代先生
介護福祉学科
介護に関しては比較的新しい実践的な学問分野で、以前は個人の経験に基づく介護(感覚的介護)が行われていました。それが、社会に対する説明責任などが必要とされる現 代において、科学的な根拠(エビデンス)に基づく介護技術・知識が、介護福祉士に求められるようになりました。本学でも、科学的根拠に基づいた介護技術やコミュニケーショ ン技術の習得を目指しています。以前は介護福祉学という分野はなく、その周辺領域である医学や、看護学、社会福祉学などの領域の専門家が、介護の領域にかかわりをもっ てきました。しかし介護が必要な方が増えていく中で、介護保険制度も創設された背景から、介護福祉学の必要性がますます大きくなってきました。そのような中、年々、介護福 祉士として求められる知識や技術のレベルが上がっており、他の領域の専門職と連携する上でも(介護職だけでは完結できませんので)、単に技術を持っているだけではなく、 関連する領域の基本的知識や、法律・制度も身につけておく必要があります。
短期大学ということもあり、介護や福祉はもちろんのこと、医学や薬学、心理学、文学など、多様な専門性をもつ教員が、それぞれの専門分野を教えています。また専門知識・技術を教えるだけではなく、幅広い人間性や倫理観などを含めた、深みのある教育をできるところが本学の強みだと思います。熱心に教えてくださる先生方ばかりですので、在学中に各分野の最先端の知識・技術を身につけられることも特徴です。先生方は、それぞれ専門とする研究の成果を学会などで発表したり、論文にしたりと最前線で活躍されています。他の研究者の研究もしっかりと調べた上でご自身の研究を行っており、常に専門分野の情報をアップデートされています。こうしたことから、最新の知識・技術に関する授業が受けられるということです。また、本学には大阪府下を中心に約90カ所の実習先がありますので、入所施設だけではなく、訪問介護、通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護など、すべての介護サービスで実習を行うことができる環境があります。2年間で3回の実習期間があり、それぞれ違った事業所で実習することになりますので、「すべての学生がすべての介護サービスを経験」することができます。実習期間は、1回目は1週間、2回目は20日間、最後は2年生の夏休みに長期で行い、段階的に幅広い実践現場で学び(技術や知識)を深められるようになっています。
本を読むことが好きな学生や実習を楽しみにしている学生など、さまざまな個性をもった学生がいます。東南アジアや東アジアを中心に、多様な国からの留学生が多いことも特徴です。半数以上が留学生になることもありますが、日本人学生、留学生ともに非常に仲が良く、クラスの雰囲気がとても良いです。留学生は、一定水準以上の日本語が使えて、日常的なコミュニケーションの取れる学生に入学していただいています。グループディスカッションや演習授業で、学生同士のかかわりが増えることによって仲が深まり、クラスの雰囲気も良くなっていきます。4月の入学時と比べると、半年ほど経つころには、最初は限られたクラスメートとしか話をしていなかった学生が、いろいろなクラスメートと話をできるようになっています。コロナ渦で学生同士が顔を合わす機会が例年より少なくなっていますが、例年と同様良い意味でうち解けて、率直に話ができる仲間ができているのではないかなと感じています。今年は特に大学に来れない期間がありましたし、仲間と一緒に授業を受けたい、という気持ちがよりいっそう強かったと思います。そういったこともあり、例年以上に、仲間に会うことを楽しみにしている学生がほとんどのように感じています。
高校生としてオープンキャンパスに参加してくれていた2人が本学の学生となり、今ではオープンキャンパスの手伝いで、後輩となるかもしれない高校生にとても丁寧に対応をしてくれている姿を見て、大きな成長を感じます。また、毎年のように卒業生が本学を訪れてくれて、先生方や後輩に会いに来たり、近況報告をしてくれたり、社会人(介護の専門職など)として働いていることを報告してくれます。可能であれば、卒業生には、今後の授業でゲストスピーカーとして話をしてもらいたいと他の先生と話しています。学生にとって、先輩が一番身近な専門家の一人です。学生と卒業生、お互いがさらに学びを深められる、良い機会になるのではないかと考えています。卒業生たちがこの大学で学んだことを活かして社会で活躍し、地元の介護を支えてくれています。このようなことに、私たち教員も間接的に関われていますし、卒業生の姿を見ていると、これからの介護をしっかりと支えていってくれるということも実感できます。リーダーの資質をもった学生もたくさんいますので、日本の介護現場の中核として活躍してほしいですし、留学生においては、日本の介護を将来母国でも使命感を持って伝えたり、活かしていってもらいたいと思います。これからの我が国の、そして世界の介護を引っ張っていく存在となって、活躍してくれることを期待しています。
今回インタビューに答えてくれた2人の学生は、ともに高校生の頃から熱心にオープンキャンパスに参加してくれて、1回だけではなく、複数回オープンキャンパスに来てくれていました。最初に来たときに良い印象をもってくれたので、何度も本学に足を運んでくれたのだと思います。オープンキャンパスでは異なるテーマ、異なる先生により毎回違った内容でミニ講義を行っていますので、何度来ても新しい経験をしてもらえるように工夫しています。先の2人は入学後も変わらず授業に真剣に取り組んでくれており、順調に学びを深めてくれています。その成長を見るにつれ、私たち教員側もより良い教育をしていかなければならないと再認識させられ、それは教員自身の学びになっています。学生の成長は、より良い教育システムを作っていこうという、教員一人ひとりのモチベーションにもなっています。
高齢者や障害者の施設で支援を行うことを考えると、介助のテクニックだけでは不十分です。きちんと相手のお話を聞くことや、コミュニケーションを取って支援することは、介護の知識や技術の領域を超えた幅広い教養だったり、人間性、倫理観が必要になります。東大阪大学では、単に介護の技術を教えるだけではありません。社会人としての幅広い人間教育や相応しい教養を学生のうちに伝え、それを身につけた専門家を世の中に送り出そうと考えています。介護実習にはとくに力を入れており、すべての介護サービスを段階的に経験できるようにしています。それにより、国家資格である介護福祉士の受験資格を得られるだけでなく、資格取得後の実践にも役立つ力をつけることができます。もちろん就職支援もしっかりと行っており、大阪府下を中心に様々な就職先が広がっています。